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自治体DXとは?推進が進む背景や課題・取り組み事例を紹介

日本政府は令和2年12月に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を発表し、デジタル社会のビジョンを新しく示しました。
国や企業だけでなく、住民の暮らしを守る自治体でもデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みが進められています。
例えば、プレミアム商品券の電子化や、デジタル採用面接の導入、行政手続きのオンライン化といった取り組みがDXの一例です。

本記事では、自治体DXの背景や課題、取り組み事例をご紹介していきます。

自治体DXとは?

自治体DXとは、どのような取り組みを指すのでしょうか。そもそも     DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変する」取り組みを指します。[注1]

つまりDXは、単なる業務効率化や業務プロセスのデジタル化を指す言葉ではありません。データやデジタル技術を活用し、新たな顧客価値やサービスを創造するのがDXの目的です。地方行政に置き換えれば、情報システムの標準化や行政手続きのオンライン化などを通じ、「利用者視点で利便性のある行政サービス」を実現するのが自治体DXの狙いです。

[注1]総務省「自治体DX全体手順書【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835265.pdf (参照:2022-10-13)

日本政府は令和2年12月に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を発表し、自治体が具体的に取り組むべき施策として「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」や「自治体DX推進手順書」を取りまとめました。プレミアム商品券の電子化、デジタル採用面接の導入、ペーパーレス化やテレワークの推進、さまざまな行政手続きのオンライン化など、多くの自治体がDXに向けた取り組みを実行しています。このようにして自治体DXの取り組みが加速している背景についても知っておきましょう。

自治体DX推進の背景

多くの自治体がDXに取り組む背景には、少子高齢化による人口減少や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大などの社会問題が関わっています。また、経済産業省が平成30年に発表した「DXレポート」では、2025年の崖と呼ばれる問題が新たに提起されました。ここでは、自治体DX推進の背景となっている問題を3つご紹介します。

▼経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

1.少子高齢化

自治体DXが必要な理由の一つは、少子高齢化が急激に進行しているためです。日本の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けており、2065年には老年人口(65歳以上)の割合が約4割に達すると予測されています。[注2]

自治体においても、将来的な職員の確保が難しくなることが懸念されます。総務省の統計によると、令和3年の地方公共団体の総職員数は280万661人です。新型コロナウイルスの感染対策や経済支援、児童相談所の体制強化などの子育て支援、特別支援学校・学級の体制強化を始めとした業務量の増加に対応するため、対前年比で38,461人の増加となっています。[注3]

今後も職員の業務負担が増加すると予測される一方で、どのように少子高齢化に対応し、人手不足の問題を解決するかが自治体の課題です。その解決策の一貫として、情報システムの標準化や行政手続きのオンライン化など、自治体DXの役割に注目が集まっています。

[注2]内閣府「人口減少と少子高齢化」https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/2zen2kai1-2.pdf (参照 2022-10-13)
[注3]総務省「令和3年地方公共団体定員管理調査結果の概要」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000784530.pdf (参照 2022-10-13)

2.新型コロナウイルス感染症

世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響も、自治体DXを加速させる一因となっています。新型コロナウイルス感染症をきっかけとして、地方行政におけるデータ活用や、行政手続きのオンライン化の遅れが浮き彫りになりました。総務省の「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」でも、新型コロナウイルス感染症の流行が自治体DXの原動力になったと以下のように説明されています。[注4]

“新型コロナウイルス対応において、地域・組織間で横断的にデータが十分に活用できないことなど様々な課題が明らかとなったことから、こうしたデジタル化の遅れに対して迅速に対処するとともに、「新たな日常」の原動力として、制度や組織の在り方等をデジタル化に合わせて変革していく、言わば社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が求められている。”

[注4]総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835260.pdf (参照 2022-10-13)

コロナ禍では感染予防対策の観点から、窓口で職員とやりとりする対面主義、紙ベースの書類で手続きを行う書面主義、ハンコを必要とする押印原則の3つが問題とされました。これらの問題の対策として、2020年12月に内閣府が「地方公共団体における押印見直しマニュアル」を発表し、押印手続きの見直しを進めるなど、新型コロナウイルス感染症への対策を念頭に置いた自治体DXの取り組みがスタートしています。

3.2025年の崖/h3>

2025年の崖は、経済産業省が平成30年9月に発表したDXレポートで提起した問題です。老朽化やブラックボックス化が進み保守運用のコストがかさんでしまうシステムであるレガシーシステムが放置されることで、2025年以降に2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が発生する可能性があると言われています。
[注5]経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf (参照 2022-10-13)

例えば、レガシーシステムが残存すれば、システムの保守運用にかかる費用がふくらんだり、システムトラブルやデータ流出などのセキュリティリスクが増大したりして、IT関連予算を圧迫する恐れがあります。そのため、経済産業省は「DX推進システムガイドライン」を策定し、DX実現に向けた取り組みを段階的に進めることを推奨しています。

自治体がDXを推進する際のポイント

総務省の「自治体DX全体手順書【第2.0版】」によると、自治体DXを推進する時のポイントは以下の4つがあります。[注6]

1.DXの認識共有・機運醸成

DX実現に向けて、首長から一般職員までDXの理念やイメージを共有する

2.全体方針の決定

利用者中心の行政サービスを実現するため、具体的なビジョンや工程表を策定する

3.推進体制の整備

自治体DXの司令塔となるDX推進担当部門を設置し、各業務担当部門と緊密に連携する

4.DXの取り組みの実行

PDCAサイクルによる進捗管理や、OODAのフレームワークを活用した意思決定を行う

自治体DXは、単なる情報通信技術(ICT)の活用や、業務プロセスのデジタル化とは一線を画す取り組みです。行政機関の首長や幹部職員だけでなく、一般職員にもDXの理念やイメージを丁寧に共有し、部門横断的にDXを推進していくことが大切です。またデジタル人材を確保し、DXの司令塔として取り組みを主導して進めるDX推進担当部門を設置するなど、自治体DXに向けた組織づくりにも取り組みましょう。

[注6]総務省「自治体DX全体手順書【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835263.pdf (参照:2022-10-13)

自治体が重点的に取り組むべき6つのDX施策

総務省が作成した自治体DX推進計画では、自治体が重点的に取り組むべき6つのDX施策を取り上げています。それぞれのポイントをご紹介します。[注7]

1.自治体情報システムの標準化・共通化

目標時期を令和7年度とし、ガバメントクラウドの活用に向けた検討を踏まえ、基幹系20業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行

2.マイナンバーカードの普及促進

令和4年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づき、申請を促進するとともに交付体制を充実させる

3.自治体の行政手続のオンライン化

令和4年度末を目指して、主に住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続(31手続き)について、原則マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能とする

4.自治体のAI・RPAの利用推進

1、3による業務見直し等を契機に、AI・RPA導入ガイドブックを参考に、AIやRPAの導入・活用を推進

5.テレワークの推進

テレワーク導入事例やセキュリティポリシーガイドライン等を参考に、テレワークの導入・活用を推進。1、3による業務見直し等に合わせ、対象業務を拡大

6.セキュリティ対策の徹底

改定セキュリティポリシーガイドラインを踏まえ、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、セキュリティ対策を徹底

[注7]総務省「自治体DX全体手順書【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835265.pdf (参照 2022-10-13)

1.自治体情報システムの標準化・共通化

自治体情報システムの標準化・共通化とは、各自治体が独自に運用している基幹系17業務システムを統一し、国の定めた標準仕様に合わせる取り組みです。例えば、地方税や社会保障、戸籍、住民登録、印鑑登録、児童手当などを管理するシステムが当てはまります。将来的には、2025年に稼働予定の「ガバメントクラウド(仮称)」への移行が予定されています。

2.マイナンバーカードの普及促進

日本政府は2022年度末(2022年10月時点)までに、ほぼ全ての国民にマイナンバーカードを普及させることを目指しています。地方行政においても、マイナンバーカードの保険証利用や、公金受取口座としての登録など、マイナンバーカードの普及促進に向けた取り組みが求められます。

3.行政手続のオンライン化

同様に、マイナンバーカードを使って各種手続きが可能なマイナポータルを活用し、さまざまな行政手続きをオンラインで行うための仕組みづくりが必要です。例えば、子育て、介護、被災者支援、自動車関連の手続きが対象となっています。

4.AI・RPAの利用推進

RPA(Robotic Process Automation)とは、定型的な事務手続きを自動化するための情報通信技術です。特にAIが搭載されたRPAを導入することで、職員の業務負担を大きく軽減できます。自治体DX推進計画では、総務省が策定したAI・RPA導入ガイドブックを参考に、AIやRPAを順次導入していくことが求められています。2021年12月末の時点で、AIを導入済みの自治体は672団体、RPAを活用している自治体は557団体です。[注8]

例えば、愛知県では市民を対象にAIを活用した総合案内サービスを実施しています。[注9]また、高知県ではRPAを導入して職員の作業時間を35.7%~99.9%削減できています。[注10]

[注8]総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835260.pdf (参照 2022-10-13)

[注9]愛知県「【知事会見】愛知県内市町村で「AIを活用した総合案内サービス」を導入します」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shichoson/ai-sougouannai.html(参照 2022-11-14)

[注10]高知県 | 高知県行政サービスデジタル化推進計画
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/112801/files/2016062800067/file_2020435112153_1.pdf(参照 2022-11-14)

5.テレワークの推進

コロナ禍をきっかけとして、テレワークを導入する企業が急増しました。地方自治体も例外ではなく、2021年10月の時点で都道府県や政令市では100%、市区町村では49.3%の割合でテレワークが普及しています。[注11]

自治体DX推進計画では、情報システムの標準化や行政手続きのオンライン化を目指し、市区町村などの小規模団体でのテレワーク推進を求めています。

[注11]総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835260.pdf (参照 2022-10-13)

6.セキュリティ対策の徹底

さまざまな情報通信技術を活用すると同時に、情報漏えいや不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策の徹底が必要です。総務省が2020年に改訂したセキュリティポリシーガイドラインを参考にしながら、セキュリティ対策の見直しを検討しましょう。

自治体DXの課題

自治体DXの実現を目指し、多くの自治体がさまざまな取り組みを行っています。しかし、自治体DXの実現にはいくつか課題が存在するのも事実です。ここでは、自治体DXの課題を4つご紹介します。

1.職員の意識の改革

繰り返しになりますが、自治体DXの目的は、業務プロセスのデジタル化ではなく、利用者中心の行政サービスの構築です。自治体DXの現場を担う職員の意識改革を行い、自治体DXが住民にどのような恩恵をもたらすかを伝える必要があります。ツールやソフトウェアの使い方だけでなく、自治体DXの目的や狙いを職員全員としっかり共有しましょう。

2.DX人材の採用と育成

自治体DXの課題の一つが、データやデジタル技術の知見を持ったDX人材の育成です。総務省の自治体DX全体手順書で説明されているように、自治体DXの推進に当たってDX人材を募集し、DX推進担当部門を設置する必要があります。自治体内部での人材確保が難しい場合は、外部人材の活用も検討しましょう。外部人材を雇用する場合、経費の一部に特別交付税が適用されます。

3.組織における役割や権限の明確化

民間企業と異なり、地方自治体では組織における役割や権限の明確化が難しい場合があります。総務省の自治体DX全体手順書では、組織体制の整備に向けて以下の4つの指針を示しています。[注12]

全庁的・横断的な推進体制の構築。DXの司令塔として、DX推進担当部門を設置し、各業務担当部門をはじめ各部門と緊密に連携する体制を構築
各部門の役割に見合ったデジタル人材が配置されるよう、人材育成・外部人材の活用を図る
一般職員も含めて、所属や職位に応じて身につけるべきデジタル技術等の知識、能力、経験等を設定した体系的な育成方針を持ち、人事運用上の取組みや、OJT・OFF-JT(職務外教育)による研修を組み合わせて育成
十分な能力・スキルや経験を持つ職員の配置が困難な場合には、外部人材の活用も検討

[注10]総務省「自治体DX全体手順書【第2.0版】」https://www.soumu.go.jp/main_content/000835263.pdf (参照 2022-10-13)

4.行政と国民とのコミュニケーション

利用者中心の行政サービスを実現するには、データやデジタル技術を活用するだけでなく、住民との対話やコミュニケーションが必要不可欠となります。特にマイナンバーカードの普及は、行政手続きのオンライン化の柱となる重要な取り組みです。マイナンバーカードを取得するメリットや、マイナポータルを活用するメリット、プライバシーやセキュリティに関する懸念の払拭など、自治体DXの狙いをしっかりと発信しましょう。

自治体DXの取り組み事例

総務省のホームページには、「自治体DX推進手順書」や「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」、「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」の他、自治体DXの推進に役立つ「自治体DX推進手順書参考事例集」のリンクが掲載されています。

ここでは、「自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】」を参照しながら、自治体DXの取り組み事例をご紹介していきます。[注13]

[注13]総務省「「自治体DX推進手順書」の作成」https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei07_02000116.html(参照 2022-10-13)

AIチャットボットの導入

AIチャットボットは、AIと自動会話プログラムを組み合わせ、ユーザーの問い合わせに自動で応答するツールのことです。多くの自治体では、ゴミの収集日や住所変更手続き、新型コロナウイルス感染症の関連情報など、さまざまな問い合わせをAIチャットボットが回答するようになっています。AIチャットボットを導入すれば、窓口への問い合わせが減少し、職員の業務負担を軽減できます。

電子申請の導入

東京都港区では、児童手当や保育、介護保険などの申請を電子化し、オンラインで手続き可能な電子申請サービスを導入しており、令和3年度以降は、需要の多い申請手続きを順次電子化しています。スマートフォンかパソコン、マイナンバーカードがあれば、誰でも電子申請を行うことが可能です。

RPAの導入

熊本県御船町はRPAの導入を検討し、まずはDXへの意欲が高い水道部局での運用を開始しました。結果として、これまで水道管の更新に必要だった設計委託料を大きく削減でき、5,165,743円のコストカットに成功しました。[注14][注15]

[注14]総務省「自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000835263.pdf (参照 2022-10-13)

[注15]総務省「自治体DX推進計画概要」https://www.soumu.go.jp/main_content/000759086.pdf(参照 2022-10-13)

職員研修

栃木県は自治体DXの実現のため、首長を対象としたトップセミナーや、全職員を対象とした職員研修を実施しています。また、市区町村に研修教材を提供するなど、小規模団体のDXを支援する取り組みも行っています。

テレワークの推進

京都府はコロナ禍をきっかけとして、テレワークを導入しました。紙の出勤簿を廃止し、職員が使用するパソコンのログ履歴を取得するためのシステム改修を実施するなどして、テレワーク中の勤怠管理を行っています。

オープンデータの活用

オープンデータとは、「誰でも許可されたルールの範囲内で自由に複製・加工や頒布などができるデータ」のことです。[注16]横浜市金沢区では、子育て関連情報を誰でも利用可能なオープンデータとして公開することで、住民の子育てを支援しています。

[注16]福岡市「オープンデータとは?」
https://www.open-governmentdata.org/about/ (参照 2022-10-13)

【まとめ】

自治体DXで住民の暮らしがより便利に

自治体DXとは、情報システムの標準化や行政手続きのオンライン化など、最先端のテクノロジーを活用し、利用者中心の行政サービスを実現する取り組みを意味します。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、経済産業省が警鐘を鳴らす2025年の崖の問題など、地方行政を取り巻く環境は大きく変化しています。AIチャットボット、電子申請、RPAなどのICTの導入や、職員研修やテレワークの推進など、できるところから自治体DXに向けた取り組みを進めましょう。

DXの推進を図る場合には、「DIGITAL SHIFT(デジタルシフト)」のサービスをぜひご検討ください。DX人材の育成、DX戦略立案など、DXのフェーズに合わせたサービスをご提案いたします。

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