DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や進め方などをわかりやすくご紹介
経済産業省が平成30年9月に発表した「DXレポート」を一つのきっかけとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増加しました。
DXとは、AI、RPA、IoT、ロボティクス、クラウドコンピューティングなどのIT技術を活用し、新たなビジネスモデルを生み出す取り組みを指します。
しかし、海外と比べて日本企業のDXは遅れているのが現状です。本記事では、DXの定義や進め方、企業事例をわかりやすくご紹介します。
経済産業省が平成30年9月に発表した「DXレポート」を一つのきっかけとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増加しました。DXとは、AI、RPA、IoT、ロボティクス、クラウドコンピューティングなどのIT技術を活用し、新たなビジネスモデルを生み出す取り組みを指します。しかし、海外と比べて日本企業のDXは遅れているのが現状です。
本記事では、DXの定義や進め方、企業事例をわかりやすくご紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データやデジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルを創出する取り組みを意味します。
DXとは単なる業務効率化や、既存システムの刷新を表す言葉ではありません。新たな技術を取り入れることで、ビジネス環境の急速な変化に対応し、今までにないビジネスモデルを生み出すのがDXです。例えば、コロナ禍の緊急事態宣言が発令された際は、多くの企業がテレワークを導入し、押印、客先常駐、対面販売など従来のアナログなビジネス文化からの脱却を目指しました。
経済産業省はDXをより一層推進するため、平成30年12月に「DX推進ガイドライン」を発表しています。「DX推進ガイドライン」では、DX推進に向けた企業の取り組みが、現状は小規模なPoC(概念実証)のレベルにとどまるとして、DXを実現するための具体的なアプローチやアクションを提示しました。
また、「産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について」のホームページ上では、DXの推進に役立つ各種資料のリンクが掲載されています。DXの定義や進め方が知りたい人は、経済産業省のホームページを ご確認ください。
▼経済産業省「DX推進ガイドライン」https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12109574/www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf
▼経済産業省「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い
DXと誤解されやすいのが、デジタイゼーション(Digitization)とデジタライゼーション(Digitalization)です。経済産業省では、DXの実現に向けた取り組みを3つの段階に分けています。[注1]
1.デジタイゼーション |
アナログ・物理データのデジタルデータ化 |
2.デジタライゼーション |
個別の業務・製造プロセスのデジタル化 |
3.デジタルトランスフォーメーション |
組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革 |
デジタルトランスフォーメーション、デジタライゼーション、デジタイゼーションの違いを考えてみましょう。
1.デジタイゼーション |
紙の書類をデジタル化 |
2.デジタライゼーション |
IoTによって遠方から工場をモニタリング |
3.デジタルトランスフォーメーション |
IoTによって得たリアルタイムのデータを確認しコストの削減 |
つまり、紙ベースで管理していた文書や、人手で行っていた作業をそのまま電子化するのがデジタイゼーションです。一方、デジタライゼーションはデジタルツールを活用し、業務プロセスや製造プロセスをデジタル化する取り組みを指します。
DXは、デジタイゼーションやデジタライゼーションのその先にあるフェーズです。全社的なデジタルプラットフォームを構築し、ビジネスモデルを変革する取り組みがDXに当たります。なお、デジタイゼーションやデジタライゼーションは順番に実施する必要はありません。DXの実現に向けた課題を分析し、できるところから着手することが大切です。以下の表に、それぞれの取り組みがどれに当たるかとまとめましたので参考にしてみてください。
未着手 |
デジタイゼーション |
デジタライゼーション |
デジタルトランスフォーメーション |
|
ビジネスモデルのデジタル化 |
- |
- |
- |
ビジネスモデルのデジタル化 |
製品/サービスのデジタル化 |
非デジタル製品/サービス |
デジタル製品 |
製品へのデジタルサービス付加 |
製品を基礎とするデジタルサービス |
業務のデジタル化 |
紙ベース・人手作業 |
業務/製造プロセスの電子化 |
業務/製造プロセスのデジタル化 |
顧客とのE2E(エンドツーエンド)でのデジタル化 |
プラットフォームのデジタル化 |
システムなし |
従来型ITプラットフォームの整備 |
デジタルプラットフォームの整備 |
[注1]経済産業省「DXレポート2中間取りまとめ」https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf (参照:2022-10-13)
IT化との違い
ビジネスシーンにおけるIT化とは、コンピュータやネットワークなどのIT(Information Technology)を活用し、業務プロセスをデジタル化する取り組みを指します。DXの目的はIT化ではありません。IT化という手段を通じて、企業組織やビジネスモデルのあり方を変革する取り組みがDXとなります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目される理由
そもそも、なぜDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めているのでしょうか。DXの必要性を示したのが、経済産業省が平成30年9月に公開したDXレポートです。
DXレポートでは、「2025年の崖」と呼ばれる問題を提示しています。2025年の崖とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)が残存した場合、システム保守費用の高騰やセキュリティリスクの高まりによって、最大12兆円/年の経済損失が生じるという予測です。[注2]
[注2]経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf (参照:2022-10-13)
経済産業省の調べによると、約8割の企業がなんらかのレガシーシステムを抱えていることがわかっています。もしレガシーシステムを放置した場合、ITサービスを提供するベンダー企業だけでなく、システムを利用するユーザー企業も大きなリスクを抱えます。詳細は以下のとおりです。[注3]
ベンダー企業 |
|
ユーザー企業 |
|
このようなリスクからデータやデジタル技術の活用や、レガシーシステムの刷新によって、新しいビジネスモデルに転換しなければなりません。経済産業省は、DXシナリオを策定し、各企業ができるところからDXに着手した場合、2030年に実質GDP130兆円超の押上げが可能だと試算しています。
[注3]経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf (参照:2022-10-13)
DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的
経済産業省のDXの定義の通り、DXの目的は「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変する」点にあります。
特にアフターコロナ禍の今、急速なビジネス環境の変化に対応し、どのように企業文化やビジネスモデルを変革していくかが重要です。経済産業省がコロナ禍以降に作成したDXレポート2では、企業が実現すべきアクションとして、業務環境のオンライン化、業務プロセスのデジタル化、従業員の安全・健康管理のデジタル化、顧客接点のデジタル化の4点を挙げています。[注4]
1.業務環境のオンライン化 |
|
2.業務プロセスのデジタル化 |
|
3. 従業員の安全・健康管理のデジタル化 |
|
4.顧客接点のデジタル化 |
|
[注4]経済産業省「DXレポート2中間取りまとめ」
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf (参照:2022-10-13)
日本企業のDX推進の現状
一方、平成30年9月にDXレポートが公開されて以降、日本企業のDXはあまり進んでいないのが現状です。経済産業省が策定したDX推進指標の自己診断結果をみると、95%の企業がDXにまったく取り組んでいないか、まだ取り組み始めたばかりの段階であることがわかっています。[注5]
経済産業省はDX推進に向けた課題として、以下の5点を挙げています。経済産業省のDXレポートやDX推進ガイドラインを参考にしながら、DXの進め方を再確認することが大切です。
既存システムの問題点を把握し、いかに克服していくか、経営層が描き切れていない恐れがある
既存システム刷新に際し、各関係者が果たすべき役割を担えていない恐れがある
既存システムの刷新は、長期間にわたり、大きなコストがかかり、経営者にとってはリスクもある
ユーザー企業とベンダー企業の新たな関係の構築が必要
DX人材の不足
[注5]経済産業省「DXレポート2中間取りまとめ」https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf (参照:2022-10-13)
DXの進め方と注意点
経済産業省が策定した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)では、DXの進め方を以下の6つのフェーズに分けています。それぞれのポイントや注意点をご紹介します。
経営戦略・ビジョンの提示
経営トップのコミットメント
DX推進のための体制整備
投資等の意思決定のあり方
ITシステムの構築
実行プロセス
1.経営戦略・ビジョンの提示
最初に必要なのが、経営戦略・ビジョンの提示です。DXの推進を部下に丸投げするのではなく、経営者が明確な戦略やビジョンを持ち、DXの必要性を、「どの事業分野でどのような新たな価値(新たなビジネスの創出や即時性、コスト削減など)を生み出すことを目指すのか」「そのために、どのようなビジネスモデルを構築すべきなのか」ということを自らの言葉で発信していくことが求められます。[注6]
[注6]経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12109574/www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf (参照 2022-10-13)
2.経営トップのコミットメント
DXを実現するには、デジタルツールを導入するだけでなく、仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものを変革していくことが求められます。そのためには、経営者自らがリーダーシップを発揮し、企業組織を引っ張っていく必要があります。
3.DX推進のための体制整備
ビジネスモデルを変革するには、「新しい挑戦を促し、かつ挑戦を継続できる環境」を創っていくことが欠かせません。DX推進ガイドラインでは、マインドセット、推進・サポート体制、人材の3つの観点から、DXの実行に必要な組織づくりや仕組みづくりを求めています。
1.マインドセット |
各事業部門において新たな挑戦を積極的に行っていくマインドセットが醸成されるよう、例えば、以下のような仕組みができているか
|
2.推進・サポート体制 |
経営戦略やビジョンの実現を念頭に、それを具現化する各事業部門におけるデータやデジタル技術の活用の取組を推進・サポートするDX推進部門の設置等、必要な体制が整えられているか |
3.人材 |
DXの実行のために必要な人材の育成・確保に向けた取り組みが行われているか |
4.投資等の意思決定のあり方
DXの推進には、デジタルツールの導入や既存システムの改修など、積極的なIT投資が求められます。リスクとリターンのいずれかに偏重するのではなく、バランスの良い意思決定が必要です。
コストのみでなく、ビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか
他方、定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか
投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか
5.ITシステムの構築
DXの実現には、部門の垣根を越えた全社的なITシステムの構築が必要になります。全社的なITシステムがあれば、各事業部門のデータを一元管理し、経営戦略の立案やイノベーションに活用することが可能です。
6.実行プロセス
実行プロセスでは、企業が保有するIT資産を分析し、全社的なITシステムの導入に向けた仕分けを実施します。IT資産の評価は事業部門ごとに行うのではなく、全社横断的に実施することが大切です。
IT資産の分析・評価 |
IT資産の現状を分析・評価できているか |
IT資産の仕分けとプランニング |
IT資産の仕分けやどのようなITシステムに移行するかのプランニングができているか |
【DXグランプリ2022選出】DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例
経済産業省はDXの推進のため、優れた取り組みを行った企業を表彰するDX銘柄選定企業発表会を毎年開催しています。ここからは、DXグランプリ2022に選出された中外製薬株式会社と日本瓦斯株式会社の事例をそれぞれご紹介します。
▼経済産業省「「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」を選定しました!」https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607001/20220607001.html
中外製薬株式会社
中外製薬株式会社は、AIやロボティクスを活用した創薬や、リアルワールドデータ(臨床現場に基づく医療データ)の活用によって、革新的なヘルスケアソリューションを生み出しました。また、社内ナレッジを蓄積するDigital Innovation Lab(DIL)や、デジタル人財の育成を加速させるChugai Digital Academyを設立するなど、DX推進に向けたデジタル基盤の強化にも取り組んでいます。
日本瓦斯株式会社
日本瓦斯株式会社は、ガスや電気などのプラットフォーム事業を拡大し、他者と共同で利用する仕組みをつくりました。例えば、ガスメーターを遠隔で自動検針する「スペース蛍」を15社に提供し、2022年3月末の時点で全国に7万台以上を設置しています。[注7]
[注7]経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-report2022.pdf (参照:2022-10-13)
DX推進を手助けする補助金
DXの推進には、デジタルツールの導入や既存システムの改修など、さまざまなIT投資が必要です。これからDXの実現を目指す企業は、国や自治体の補助金制度の利用を検討しましょう。
ここでは、DX推進を手助けする補助金として、IT導入補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、キャリアアップ助成金の3点をご紹介します。
1.IT導入補助金
IT導入補助金は、ハードウェアの購入やソフトウェアの導入、セキュリティ対策の実施など、IT投資にかかった費用の一部を支援するための補助金制度です。例えば、デジタル化基盤導入類型の場合、5万円~350万円の費用が補助されます。
2.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業や小規模事業者を対象とし、制度変更に伴う支出の一部を支援する補助金制度です。例えば、働き方改革、インボイス制度、賃上げなどに対応するための設備投資が適用されます。
3.キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、パート、アルバイト、派遣社員など、非正規雇用の労働者のキャリアアップを支援するための補助金制度です。DXの実現に向けてIT人材を育成する場合、キャリアアップ助成金を利用することで、人件費の一部を補填できます。
【まとめ】
DXとは新たな技術を取り入れ、ビジネス環境の急速な変化に対応し、今までにないビジネスモデルを生み出すこと
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、データとデジタル技術を活用し、これまでにないビジネスモデルを展開する取り組みです。経済産業省が策定したDXレポートでは、DXの実現が遅れた場合、最大12兆円/年の経済損失が発生すると予測しています。
DXの推進を失敗しないためには、経済産業省のDX推進ガイドラインを参照し、6つのフェーズに分けて取り組むことが大切です。DXの実現を目指す場合は、IT導入補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、キャリアアップ助成金など、DXに関連した補助金制度の利用も検討しましょう。
DXの推進を図る場合には、「DIGITAL SHIFT(デジタルシフト)」のサービスをぜひご検討ください。DX人材の育成、DX戦略立案のサポートなど、DXのフェーズに合わせたさまざまなサービスをご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
▼「デジタルシフト」サービスの詳細はこちら
https://www.digitalshift.co.jp/service