デジタイゼーションとデジタライゼーションは何が違う?意味や具体例を紹介
ビジネスをデジタル化する際に使われることの多い用語に「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」がありますが、両者の言葉の意味はあまり良くわかっていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いやそれぞれの具体例について紹介します。また、デジタイゼーションとデジタライゼーションを正しく実施した上で実現する、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のポイントもあわせて解説します。
DX推進の3つのステップ
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のためには、次に挙げる3つのステップを踏む必要があります。
◇DX推進の3ステップ
ステップ1:デジタイゼーション(特定業務のデジタル化)
ステップ2:デジタライゼーション(業務フローやプロセスのデジタル化)
ステップ3:デジタルトランスフォーメーション(製品およびサービスのデジタル化)
これら3つのステップには、決まった順番があるわけではありません。しかし、デジタイゼーションとデジタライゼーションは、DX推進には欠かせないステップとなるため、最終的にDXを実現するのであれば、上記のステップで進めていくのがよいとされています。
そもそもデジタルトランスフォーメーション(DX)とは
では、そもそもデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。平成30年に経済産業省が公表したDX推進ガイドラインでは、DXは以下のように定義されています。
“Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”
※引用:令和3年 情報通信白書(デジタルトランスフォーメーションの定義)|総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html (2022-11-24)
この中でポイントとなるのは、次の3つの点です。
企業が外部の環境の変化に対応しながらも、競争上の優位性を確立する
業務や組織、プロセスの変革、製品・サービス・ビジネスモデルの変革を行っていく
データとデジタル技術を活用して、上記2つを実現していく
ビジネスにおいてDXを実現していくことは、変化に対応しつつ、組織やビジネスモデルをデジタルへと移行させ、他社との差別化を促し、競争優位性を確立していくことに他なりません。このDXを実現していくためにも重要となってくるのが、以下で説明するデジタイゼーション(Digitization)とデジタライゼーション(Digitalization)です。
デジタイゼーション(Digitization)とは
それではまず、デジタイゼーション(Digitization)の意味について確認していきましょう。
デジタイゼーション(Digitization)とは、ITシステムの導入によって既存の業務を部分的にデジタル化することを指し、デジタル化することで業務効率のアップやコストの削減を目指します。具体的には、今までアナログで行ってきた業務のデジタル化が該当します。
デジタライゼーション(Digitalization)とは
一方、デジタライゼーション(Digitalization)とは、業務全体をデジタル化することで業務の効率化を目指すことです。業務全体をデジタル化すると、効率化の実現だけではなく、組織にデータや蓄積されやすい状態になるため、そのデータをもとにより生産性を高めるノウハウを作り出すことができます。デジタル技術を活用して既存のビジネスモデルから新たなビジネスモデルを作り出し、組織の変革を促すことも可能です。
デジタイゼーションの具体例
ここでは、デジタイゼーションの具体例について、主に4つの例を取り上げ確認していきます。
書類のデジタル管理・ペーパーレス化
一つ目は、紙で管理していた書類や帳票をデジタル化して、ペーパーレス化を目指すことにより、文書管理業務の簡素化を目指すというものです。書類のデジタル管理やペーパーレス化には、文書管理システムや業務管理システムを活用します。
コスト削減や業務効率化の実現につながったほか、書類の電子化により、時間や場所を選ばず仕事をするテレワークが可能になります。
オンライン会議・オンライン営業
二つ目はオンライン会議システムの導入です。オンライン会議やオンライン営業の導入は会議を行う際にも、対面で実施する必要がなくなります。そのため、出席者が決まった時間に決まった場所に集まらなくてもよくなり、離れた場所からでも会議に参加できるようになります。
また、オンライン会議システムやオンライン営業システムの活用により、交通費や移動時間の削減、業務効率化につなげることが可能です。
オンライン広告
昨今は、チラシやポスターといった従来のアナログ広告とは異なり、オンライン広告を使用する企業が増えています。三つ目はチラシからWeb広告へ移行し、ポスターをデジタルサイネージに変更すると、より多くの消費者にアピールすることもできることです。
また、オンライン広告では、消費者の行動データの収集も可能なため、より顧客分析がしやすくなるメリットもあります。
APIの活用
四つ目はAPIの活用です。従来は部門やプロジェクトごとに構築されていたシステムはAPIを活用することで、それぞれのシステムを連携することが可能な場合があります。またAPIの活用方法によっては外部システムやサービスとも組み合わせることもでき、例えば支払いや振込み作業の自動化といったこともできます。バックオフィス業務の効率化は、APIを活用した例の一つといえるでしょう。
デジタライゼーションの具体例
一方、デジタライゼーションの具体例には、次の3つが挙げられます。
RPAの導入
RPA(Robotic Process Automation)とは、データ入力や転記、ファイルの複製といった単純作業を自動化できるシステムです。この機能を活用して、データ入力やメール配信といった単純作業の自動化が可能です。これによって、作業時間の短縮やミス削減が期待できます。
実際、高知県庁ではRPAを一部の部署に導入したことで、同部署の職員の作業時間を35.7%~99.9%まで削減できています。(※1)
(※1)高知県 | 高知県行政サービスデジタル化推進計画
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/112801/files/2016062800067/file_2020435112153_1.pdf
MAを活用したリードの獲得
MA(Marketing Automation)を活用し、マーケティング活動の自動化によって、見込み客に対するトラッキングを行います。もし重要な見込み客に動きがあった場合には、通知を設定し、状況によって即対応できるようにしておきます。
IoTシステムを活用した工場のモニタリング
自動化が進んでいる近年の工場において、IoTシステムを活用することで、温度や異常の検知などが遠隔でモニタリング可能です。さらに5Gが導入されたことによって、超高速、超低遅延でデータがやり取りできるようになり、よりリアルタイムで工場をモニタリングできます。また、5Gは大容量のデータを超高速で伝達可能なため、4Kや8Kといった従来よりも高精細な映像を確認することで、細部までモニタリングが可能になります。
DX推進のポイント
DXを成功に導くためには、経営者側でも抑えておきたいポイントがあります。ここでは、DX推進のポイントとして3つを取り上げ、紹介していきます。
DXを行う目的と優先順位の明確化
まずはDXを行う目的と優先順位を明確化させましょう。DX推進の目的は業務をデジタル化することではなく、デジタル化によって全社を挙げたビジネスモデルの変革を行い、市場環境の変化に応じた競争優位性を確立することです。
またDXを推進する際には、一気にデジタル化を行うのではなく、優先順位を明確化した上で行っていく必要があります。そのためには、既存業務で改善したい点を明確化し、検討していくとよいでしょう。例えばWeb会議システムやビジネスチャット、電子署名システムなどは、比較的導入しやすいデジタル化のツールとして知られています。
DXを推進するためには、DXを行う目的をはっきりさせ、優先順位の明確化を行った上で実施していきましょう。
企業トップ中心に組織として取り組む
DXを推進する際には、どうしても既存のシステムの変更によって、現場から反発が大きくなる可能性があります。企業全体で意思統一をはかるためにも、企業トップが中心となって、組織として取り組んでいくことが重要です。
トップがリーダーシップを発揮し、長い目でDX推進を行っていくことが、DX化を成功へと導いていきます。
DX人材の確保
DXを進めていくためには、DXに特化した人材の確保が必要です。具体的には、次に示す知識やスキルを持つDX人材を確保するため、
以下の項目に特化した人材育成などの取り組みを行っていくとよいでしょう。
ITやデジタルに関する知識
データ分析や解析のスキル
UIやUXのデザインスキル
課題発見力や課題解決力
コミュニケーション能力
DXを成功させるためには、デジタルを活用するための知識を持っているだけではなく、データ分析や解析スキル、課題発見力や課題解決力、デザインスキルも重要です。さまざまな知識やスキルを身につけた人材を確保することで、DXの推進ができます。
おすすめの方法は、社内でこれらの知識やスキルを持つ人材の確保ですが、難しい場合には外注での人材確保も検討する必要があります。
DXの成功事例
最後に、DX推進の成功事例を3つ取り上げ、紹介します。
損害保険ジャパン株式会社
損害保険ジャパン株式会社では、2021年にDX推進部を設置、全従業員をDX人材として、積極的なDX推進を行ってきました。従来からデジタル技術を軸とした事業変革の必要を感じていた同社は、5つの柱(経営陣によるリーダーシップ、DXを推進する出島組織の創設と積極投資、保険の枠を超えた協創の推進、基幹システムの全面刷新とIT部門の抜本的な改革)を打ち立て、他社に先駆けた取り組みを継続しています。
SGホールディングス株式会社
総合物流企業として知られるSGホールディングスグループ株式会社では、グループ全体で活用可能なシステムを導入し、ITコスト削減をはかりつつ、レガシーシステムの大幅な刷新を行いました。また、AI-OCRを活用した有効活用した伝票情報のデジタル化の他、TMS(Transportation Management System:輸配送管理システム)を利用した配送作業の最適化などにより、従業員の作業の削減を実現し、システムの効率化を行いました。
株式会社ブリヂストン
株式会社ブリヂストンでは、熟練したスキルをDXによって標準化を目指すことにより、生産性の向上をはかり、高い品質の商品の安定供給を実現しました。また、航空機整備作業の効率化を可能とした、タイヤ摩耗予測技術を活用し、タイヤの交換時期を予測、計画的なタイヤ交換をできるようにしたそうです。
さらに、全国900以上の事業所を利用するユーザーの待ち時間に関するデータを分析することで、店舗の場所を最適化し、よりクオリティの高いユーザー対応へとつなげました。
【まとめ】
DX推進にはデジタイゼーションとデジタライゼーションは重要な要素となる
本記事では、DX推進に欠かせないデジタイゼーションとデジタライゼーションの意味の違いや具体例を紹介しました。また、DXを推進するためのポイントもあわせて解説しました。
デジタイゼーションは、部分的に業務のデジタル化を行なうことを指し、デジタライゼーションは業務フローやプロセス全体のデジタル化を行うことを指します。DXを推進するには、デジタイゼーションとデジタライゼーションが重要です。なお、DXを成功に導くためには、DXに関する人材の確保や戦略の策定、ビジネスモデルの変革が必要です。
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