DX投資促進税制とは?概要や適用までの流れなどをまとめて紹介
DX投資促進税制は、新しいソフトウェアや機器を導入してDXを推進しようとする企業を支援するための仕組みです。一定の要件を満たせば、税額控除や特別償却などの優遇措置を受けられるため、有効活用しましょう。
本記事では、DX投資促進税制の概要や要件、適用を受けるまでの流れをまとめてご紹介します。
DX推進を検討している企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
DX投資促進税制とは?
まずはDX投資促進税制の概要や対象者について、国税庁のWebサイトをもとに解説します。(※)
※国税庁「No.5924 デジタルトランスフォーメーション投資促進税制(情報技術事業適応設備を取得した場合等の特別償却又は税額控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5924.htm(参照:2022-11-29)
DX投資促進税制の概要
DX投資促進税制とは、職場のデジタル環境を整えるための投資に対して、税額控除や特別償却を適用する仕組みのことです。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、AIやビッグデータなどのデジタル技術を活用して、業務効率化を進めたり、新しいビジネスモデルを創出したりすることを意味します。
近年、新型コロナウイルス感染症や働き方改革などの影響により、企業には新しい職場環境の整備が求められています。とはいえ企業の費用負担も大きいため、一定の要件を満たす設備投資に対しては、税額控除などが適用されるのです。
金額基準・控除額
DX投資促進税制では、税額控除か特別償却のどちらかの優遇措置を受けることが可能です。ただし、それぞれに上限金額が設定されているため詳細をお伝えしていきます。
税額控除限度額
税額控除の限度額は以下の通りです。
(1)対象資産の合計が300億円以下の場合
税額控除限度額=情報技術事業適応設備の取得価額または事業適応繰延資産の額×3%(条件を満たす場合は5%)
(2)対象資産の合計が300億円を超える場合
税額控除限度額=300億円×{(情報技術事業適応設備の取得価額または事業適応繰延資産の額)/対象資産合計額}×3%(条件を満たす場合は5%)
DX投資促進税制とカーボンニュートラル投資促進税制による法人税額の特別控除との合計で、調整前法人税額の20%相当額が上限となります。また、グループ外の法人とデータ連携する場合は、(1)と(2)の計算式中の3%が5%に変更されます。
特別償却限度額
特別償却の限度額は以下の通りです。
(1)対象資産の合計が300億円以下の場合
特別償却限度額=情報技術事業適応設備の取得価額または事業適応繰延資産の額×30%
(2)対象資産の合計が300億円を超える場合
特別償却限度額=300億円×{(情報技術事業適応設備の取得価額または事業適応繰延資産の額)/対象資産合計額}×30%
対象者・対象物
DX投資促進税制の適用対象となるのは、青色申告書を提出しており、認定事業適応事業者に該当する法人です。認定事業適応事業者になるためには、事業適応計画を作成し、主務大臣の認定を受けなければなりません。
DX投資促進税制の対象となる資産としては、情報技術事業適応設備と事業適応繰延資産が挙げられます。情報技術事業適応設備とは、DX推進のために導入したソフトウェアや、そのソフトウェアを使うために必要な機器のことです。
事業適応繰延資産とは、ソフトウェアや機器の導入にかかった費用の中で、繰延資産に該当するものを指します。クラウドシステムを導入する際の初期費用などが該当するでしょう。
対象期間
DX投資促進税制の対象期間は、令和3年8月2日から令和5年3月31日までです。対象期間内に、事業適応計画の認定を受けた上でソフトウェアや機器を導入し、使用をスタートしなければなりません。DX投資促進税制の適用を受けたい場合は、早めに計画を立て、遅れないように準備を進めましょう。
DX投資促進税制が生まれた背景
DX投資促進税制が創設された背景についても簡単に確認しておきましょう。DX投資促進税制は、令和3年度の税制改革により導入されました。DX投資促進税制が新しく創設された大きな理由は、新型コロナウイルス感染症の影響により、企業のデジタル改革が必要不可欠になったことです。(※)
リモートワークやオンライン会議を実現するためには、デジタル技術の導入が欠かせません。とはいえ、新しいシステムや機器を導入するためには、多額の費用がかかるため、税額控除や特別償却などを受けられる認定制度が創設されました。デジタル技術を普及させることにより、社会全体を発展させるという狙いもあります。
※経済産業省.「令和3年度(2021年度)経済産業関係税制改正について」. https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2021/pdf/zeisei.pdf(参照:2022-11-29)
DX投資促進税制の認定要件
DX投資促進税制の適用を受けるためには、デジタル要件と企業変革要件の2つを満たす必要があります。それぞれの認定要件について、詳しくチェックしておきましょう。
デジタル要件(D要件)
デジタル要件として定められている項目は、以下の3つです。
1.データの連携
データの連携や共有に関する要件です。社内で保存している既存データと、社外のデータを連携させなければなりません。
2.クラウド技術の活用
クラウド技術の活用もデジタル要件のひとつです。クラウド技術による情報共有の仕組みを整えましょう。
3.DX認定の取得
DX認定を取得することも必要です。DX認定を取得するためには、情報処理推進機構が実施する審査を受けなければなりません。経営ビジョン、デジタル技術の活用方法、設備の内容など、6つのポイントで審査を受け、基準を満たしていればDX認定を取得できます。
企業変革要件(X要件)
企業変革要件として定められている項目は、次の2つです。
1.生産性や売上の向上が期待できること
単純にデジタル技術を導入するだけでは、DX投資促進税制の適用を受けることはできません。生産性や売上の向上など、企業の利益につながるような効果が期待できる技術を導入する必要があります。
効果については、事業適用計画の中で具体的な目標を定めなければなりません。商品ごとの製造原価を8.8%以上削減する、売上高の伸び率を5%以上アップさせる、といった数値目標を設定する必要があるため、企業全体として取り組むことが重要です。(※)
※財務省.「令和3年度税制改正 令和3年3月」.https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei21/03.htm(参照:2022-11-29)
2.全社の意思決定に基づくものであること
一部の部署だけの取り組みではなく、全社的な意思決定であることも要件のひとつです。全社の意思決定であることを証明するためには、取締役会の決議文書などを添付しなければなりません。
DX投資促進税制の適用を受けるまでの流れ
DX投資促進税制の適用を受けるまでの具体的な流れは、以下の通りです。作業を始める前に、しっかりと確認しておきましょう。
1.制度の概要や要件を理解する
DX投資促進税制の適用を受けるためには、制度の概要や要件を把握しておかなければなりません。単純にソフトウェアや機器を導入するだけでは、適用を受けられないケースも多いため注意しましょう。
具体的な売上目標などを設定する必要もあるため、会社全体で取り組むことが重要です。期限が決められている制度であるため、プロジェクトチームを立ち上げたり、リーダーを決めたりして効率よく進行しましょう。
2.DX認定を取得する
DX認定の取得は、制度の適用を受けるための要件のひとつです。認定は、情報処理推進機構によって行われ、法人から個人事業主まで全ての事業者が対象とされています。
一定の基準を満たすと、DX推進の準備が整っている「DX-Ready」の状態であると認定されます。具体的には、情報処理技術の活用の方向性、セキュリティ対策など、6つの項目で審査されるため、しっかりと準備しておきましょう。情報処理推進機構が運営する「DX推進ポータル」から申請できます。
3.事業適応計画を作成して申請する
DX投資促進税制の適用を受けるためには、事業適応計画を作成して認定を受ける必要があります。事前に主務官庁に相談して、要件を満たしているかを確認した上で、事業適応計画の作成をスタートするとよいでしょう。
事業適応計画には、目標数値や事業の具体的な内容などを記載します。目標としては、売上高の伸び率や原価の削減率など、具体的な数値を記載しましょう。事業内容としては、デジタル技術を活用して新しいサービスを開発することや、職場環境を改善することなどを記載します。
4.事業適応計画を実施する
事業適応計画を提出して認定されると、認定書・確認書が発行されます。事業適応計画を提出するだけでは、DX投資促進税制の適用を受けられません。事業適応計画に従って、実際にデジタル技術を導入して活用しましょう。
5.税務申告を行う
事業の適用年度が終了したら、税額控除か特別償却を適用して税務申告を行います。事業適応計画と認定書・確認書の写しも必要なため、準備しておきましょう。
事業年度ごとに、DX推進に関する実施状況を報告する必要もあります。実施状況報告書を作成の上、事業年度の終了から3カ月以内に提出するようにしましょう。
【まとめ】
DX投資促進税制の概要や要件を理解した上で申請作業を始めましょう
本記事では、DX投資促進税制の概要や要件、適用を受けるまでの流れなどを紹介しました。DX投資促進税制の適用を受けるためには、デジタル要件や企業変革要件を満たさなければなりません。クラウド技術を導入すること、DX認定を取得することなど、さまざまな要件をクリアする必要があるため、しっかりと準備しておきましょう。
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