DX戦略とは?必要な理由や策定方法、成功させるポイントを紹介
DX戦略とは、DXにおける目標達成に向けた指標の確立のことです。DXは導入さえすれば成果が出るものではなく、目標や指標を確立しなければ意義をなさないことも珍しくありません。またDX戦略の策定について難しそうだと思われる方もいますが、ステップに従えば比較的容易に策定できます。
そこで本記事ではDXやDX戦略について意味を確認した上で、DXにおいて戦略の立案やビジョンの明確化が必要な理由やDXのビジョンを策定する方法、DX戦略策定の7つのステップなどについて解説していきます。
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXとは当時スウェーデンのウメオ大学の教授だったエリック・ストルターマンによって提唱された概念です。彼は論文の中で、DXについて「ITの浸透が私たちの生活をあらゆる面でより好ましい方向に変化させる」と定義しました。論文では社会において情報技術が物理世界のさまざまなものとつながることで変化を起こしつつあることを指摘しています。
日本でDXが広まったきっかけは経済産業省が2018年12月に発表したDX推進ガイドラインです。このガイドラインでは、DXとは企業がビジネス環境の急激な変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基にビジネスモデルや業務、組織、企業文化、プロセスなどを変革し、競争上の優位性を確立することとしています。
DX戦略とは?
DX戦略とは、DXによって目的を達成するための指標を確立することです。現代社会において、顧客に対して革新的な価値を提供するには、過去になかったような収益獲得の仕組みを構築することが不可欠になります。それには企業全体の変革が必要であり、DXを成功に導く中長期的なロードマップの確立も必要です。
DX化において経営戦略と事業戦略とのつながりは特に重要です。経営戦略を踏まえた事業戦略を元に確立した目標にすることによって、手段が目的になることを回避しやすくなります。社内のDX化では本来の目的を忘れ、デジタル化やIT化が目的にならないように注意しなければなりません。
DXのビジョンとは?
DXのビジョンとは自社が目指すべき姿、あるいは将来的に実現したい姿であり、DX実践において核となります。例えば最新技術を活用して業務を効率化したい、ITの技術を活用して従業員不足の問題を解消したいといったものです。
また従業員全体にでビジョンの策定や共有ができていないとできていなければ、DX化に不満を抱く人やDX化によってモチベーションが低下する人が出てくる可能性もあるので注意が必要です。
DXのビジョン・戦略は経営者が主体的に策定すべき
DXのビジョン・戦略は経営者が主体的に策定しなければなりません。DXの実現には社内体制が大きく変わる可能性がある他、膨大な予算が必要になることからも経営者抜きに行うことはできないでしょう。
またDXのビジョンや戦略を従業員に丸投げした場合、自社の企業変革の重要性に気付くことができなかったり、他人事として捉えてしまったりすることもあります。そうなると、DX化が想定していたように進まなくなるので注意が必要です。
経営者がDXに詳しくない場合、外部の事業者に委託することもできます。ただし経営者が主導権を握り、外注先に一任することのないようにしましょう。
DXに戦略の立案やビジョンの明確化が必要な理由
DX化に成功するためには戦略の立案やビジョンの明確化が必要です。優れたITシステムであってもビジョンが不明確なまま導入してしまうと、うまくいかないことがあります。場合によっては、自社のビジョンや業務内容と導入したシステムの相性が悪く、業務に支障をきたすこともあるので注意が必要です。
DXはビジョン達成に向けて必要な戦略を立てた上で実施していくため、ビジョンはDX推進における最初の関門としてもみなせるでしょう。
DXのビジョンを策定する方法
DXのビジョン策定では自社の課題や従業員の多くが抱いている問題意識、経営層が感じている危機感などを洗い出し、共有を行います。それらの課題や問題が解消されなければ、自社が将来的にどのような状況に陥る可能性があるのか分析を行いましょう。
問題や課題を共有した上で、自社がどういった価値を創出できるのかについて、自社の特徴や強みを考慮しながらビジョンを決めていきます。
DX戦略策定の7つのステップ
DX戦略策定の7つのステップは以下のとおりです。
現状の把握
外部環境の分析
経営戦略の見直し
DX化を推進する目的の明確化
ロードマップ作成
具体的なやるべきことを策定
定期的な見直しを行う
それぞれについて詳しく解説していきます。
1.現状の把握
DX戦略策定にあたって、自社のDX推進における状況がどのくらいの段階にあるのか把握しましょう。現状を把握することで、戦略期間内に目標のどのラインまで達成できるかを予測できる他、適切な施策を明らかにできます。
DXの推進3ステップ
DXの推進3ステップは変革のレベルによって分類されています。
デジタイゼーション
デジタライゼーション
デジタルトランスフォーメーション
ステップ1のデジタイゼーションでは紙などで管理を行っているアナログデータのデータ化を主に行います。ステップ1では既存の業務内容やプロセスが大きく変わることは基本的にありません。
続くステップ2のデジタライゼーションではデータを活用したビジネスプロセスの効率化、および高度化を行います。
最終段階ステップ3のデジタルトランスフォーメーションでは変化に対応し得る企業への変革を行います。
DXの推進ステップが2以上になると、多くの従業員が業務において大きな変化を感じることになるはずです。
成熟度レベル
成熟度レベルは戦略の有無と適用範囲において分類されており、全社における戦略がなければDXの成長が難しいであろうことを示しています。
成熟度レベルは以下のとおりです。
レベル0 未着手
レベル1 一部での散発的実施
レベル2 一部での戦略的実施
レベル3 全社戦略をベースにした部門横断的推進
レベル4 全社戦略をベースにした持続的実施
レベル5 デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル
レベル0には経営者がDXに無関心な企業だけでなく、関心があっても具体的な取り組みに至っていない企業も含まれます。
レベル1は全社戦略が明確ではないものの、社内の一部で試行・実施が行われていることが条件です。また、レベル2は全社戦略をベースにした一部の部門での推進、レベル3は全社戦略をベースにした部門横断的な推進が条件になります。
レベル4ではレベル3の条件に加えて組織にやり方を定着させられることの他、それらを継続的に改善していく力も不可欠です。そしてレベル5ではデジタル企業としてグローバル競争を勝ち抜けるレベルであることが問われています。
2.外部環境の分析
DX戦略では数年における外部環境の変化や、自社のビジネスに与える可能性がある影響を予測しなければなりません。外部環境の変化の把握を怠ると、戦略を実行する段階で規制上実行できなかったり、市場が縮小していたりということもあるので注意が必要です。
外部環境の分析ではPESTというフレームワークの活用をおすすめできます。
Politics(政治)
Economy(経済)
Social(社会)
Technology(技術)
このフレームワークを活用することで政治や経済、社会、技術が自社のビジネスに将来的にどういった影響を与えるのか予測するのに役立ちます。
3.経営戦略の見直し
経営戦略とは企業が競争優位を確立する上での基本的な考え方です。企業が成長し、利益を拡大していくためにはその方向性の指針ともなる経営戦略が不可欠となります。
経営戦略は企業にとって地図のようなものですが、見直しも必要です。特に、近年は企業を取り巻く環境、トレンド、世界情勢などが急速に変化しています。社会の状況に応じて経営戦略を見直し、再考していくことが成功の鍵となります。
4.DX化を推進する目的の明確化
前述のようにDX化は目的をしっかり持って取り組む必要があります。DX化自体が目的とならないように注意してください。
先述のように、DX戦略の推進を行う際は最新技術を導入してどういった利益を得たいかといったビジョンを明確にした上で、それを実現するにはどのシステムが必要になるか検討しなければなりません。
また目的は経営層やDXの推進を主に担当する部門のメンバーだけでなく、全従業員で共有することが求められます。
5.ロードマップ作成
ビジネス用語でロードマップとには「目標達成までの道筋」という意味で使います。があります。
社内のDX化は短期間で実現できるものもありますが、実現までに数年を要するものも多いです。そのため最終目標に加えて、目標から逆算して各段階に応じて目標を設定しておきます。中間目標やスケジュールを作成しておくことで、長期間を要するプロセスであっても迷うことなく進めやすくなるでしょう。
またロードマップを作成しておくことでDX実現に向けた自社の立ち位置を可視化できるだけでなく、現在の状況を把握しやすくなります。
6.具体的なやるべきことを策定
DXの推進にあたってやるべきことを、目的を考慮しながら策定していきます。何を行えば、思い描いているビジョンを実現できるのか考えて策定していきましょう。
ただしDX戦略は大規模なものではなく、小規模なものからスタートするようにしましょう。してください。例えば、全社に最新のテクノロジーを一括で導入すると、現場は混乱する他、サポートの手がまわらなくなります。また自社とDXの相性が合わなかった場合、大きな損失となります。損失は規模に応じて大きくなるでしょう。
7.定期的な見直しを行う
DX戦略はビジョンを達成する上で指針になるものですが、時に見直しを行い、場合によっては変更も必要です。
自社や自社を取り巻く将来について予測したとしても、そのとおりになる保証はありません。予測していた将来像と異なる未来が訪れた場合は、見直しを行うようにしましょう。
DX戦略策定の3つのポイント
DX戦略策定のポイントは以下の3つです。
経営戦略やビジネスモデルの見直しを行う
データを一元化し社内で共有する
着手する前にDXに関する情報を取得する
それぞれについて詳しく解説していきます。
経営戦略やビジネスモデルの見直しを行う
前述のようにDXとはビジネスモデルの変革を行うことです。従来のビジネスモデルに変革を起こす際には、まずは経営戦略やビジネスモデルの見直しを行わなければなりません。
社内のDX化における経営戦略やビジネスモデルの見直しでは、以下の観点から検討してみてください。
働き方改革
レガシーシステムからの脱却
顧客視点
ビジネスモデルの創出
販路の新規拡大
経営戦略では離職率の低下や従業員の満足度にもつながる働き方改革や、コスト削減につながるレガシーシステムからの脱却が重要なポイントです。
またビジネスモデルの見直しでは、顧客の視点で現在の商品やサービスについて考えてみる必要があります。改めて顧客の立場から商品やサービスを眺めてみると、問題や課題に気付くことも少なくありません。また、ビジネスモデルの見直しを行うことで、新しいビジネスモデルの創出や、販路拡大につながることがあります。
データを一元化し社内で共有する
データの一元化とは複数に分かれているデータを統合し、管理や活用しやすい状態にすることです。
DXにおいてデータの一元化はよく実施されています。データを一元化することで必要なデータが探し出しやすくなる他、情報の共有を容易に行えるため、共有を行うための各種手間を省くことも可能です。
その他にもコンプライアンスや内部統制強化の観点からもデータの一元化は重要です。ICTシステムの一元管理は企業が保有しているさまざまなICT資産の一元管理にもつながるため、コンプライアンスや内部統制を強化できます。
着手する前にDXに関する情報を取得する
情報収集では以下の情報を集めるようにしてください。
自社が置かれている状況
競合企業が置かれている状況
顧客の需要
新しい技術
自社が属する業界の状況
自社と関係する業界の状況
DX推進事例
入手した情報を考慮しながらDX戦略のビジョンを明確にし、急速に変化する企業文化を醸成していくことが求められます。
またDX推進事例を参照することで、DX導入後の自社の姿や状態、自社で実施できるDXの施策などが見えてくることも多いです。
まとめ
多くの企業にとって「2025年の崖」や「人材不足」などは解決すべき課題となっており、DX推進は急務であると見受けられます。DXの推進は目標を達成するための指標やビジョンを確立した上で、プロセスを踏んで着実に行うようにしましょう。
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